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こんにちは、介護ロボットを開発しているabaの宇井です。
現在、世界では約9億人、日本だけでも900万人以上の方が介護者として頑張っています。しかし資格を取って介護の仕事をしている方は全体の4割以下。介護有資格者がいなくなると、介護を頑張るのは家族です。そのため近年では、中学生の17人に1人がヤングケアラーで、親や兄弟の介護をしていて宿題ができないという状況に陥っています。これが日本の現状です。ただ、国も手をこまねいているわけではなく、誰もが医療・介護を届けられるようにしていこうというビジョンロードマップも描かれています。その一つがケアテックです。
ケアテックの市場は世界で300兆円、日本は33兆円で、年々大きくなっています。日本の介護保険給付費が年間10兆円なので、すでに3倍の規模です。私はケアテックを使って「祖母の介護がうまくできなかった」「どうすればいいかわからなかった」という思いを乗り越えたいと思っています。
一方で、私は起業した後3年間土日に介護職として働いていたのですが、すごく楽しかったんです。この経験から私は、何をしてあげたらいいかがわかると介護は楽しいんだということを学びました。だからこそ、ケアラーの「わからない」をテクノロジーでなくし、テクノロジーで誰もが介護できるだけでなく、したくなる社会をつくりたいと思っています。
そんな私たちが最初に届ける製品がこの「Helppad」です。これもケアラーの「わからない」に応える製品で、具体的には「おむつの中がわからない」に応えています。「おむつを開けずに中が見たい」。これは2008年のある日、ある介護者に一言一句違わずに言われた言葉です。というのも、おむつの交換業務は非常に大変だからです。1日あたり15時間以上、施設はおむつ交換業務をしています。なのに、そのうちの20~30%が空振り。「おむつを開けたけれど排泄はなかった」をずっと繰り返しているのです。また、もしおむつの外に尿や便が漏れると、洋服やシーツまで交換するので10倍以上の時間がかかってしまうという課題もあります。
これらを解決するのが、介護ベッドメーカーパラマウントベッド社と共同開発したHelppadです。主な機能は3つ。一つ目に、においセンサーで尿と便がわかること。2つ目がベッドに敷くだけで、体に機械をつけずに検知ができること。3つ目がデータを集めて介護現場に予測の介護をもたらせることです。
Helppadのシーツの中には何個か穴が開いており、そこから排泄のにおいを吸い込む仕組みとなっています。いわば人間の鼻のように、においで排泄がわかる仕組みとなっているのです。2022年8月現在、全国の100を超える介護施設に導入が進んでいます。
さらに、Helppadは改良を進めています。小型にしたり、尿と便を識別しリアルタイム通知を実現。また以前のプロダクトは、空気を吸う時に誤って、おむつの外に漏れた尿や便を吸ってしまうことがありました。そこで小型化した、においセンサーをすべてシートの中に埋め込んだ形に変更しています。
これまでは、介護ロボット導入に先進的な施設100施設をターゲットとしていましたが、仕様変更を踏まえ、2万施設に一気にアプローチし、要介護者150万人、その中でも意思疎通を取るのが困難な方々50万人にHelppadを届けていきます。
abaは他にも、国からの予算を数億円いただいて作ってきた介護者支援ソフトや、大企業の介護領域への参入を支援するaba labというR&D事業も運営してきました。Helppadを用いながら、介護者支援ソフト・aba labという事業を三位一体で回すということで、第2、第3のHelppadを生んでいく準備をしています。
経営陣は、私・宇井とCTO・谷本。彼はロボカップという人型のロボットがサッカーをする競技の世界大会で何回も優勝したことがあります。開発陣も揃ってきました。
株主・パートナー企業には、福祉用具レンタルのパイオニアのヤマシタ社に参画いただいたり、私自身が日本ケアテック協会の理事も務めています。業界内外のパイプラインを使うことで、ケアラーの「わからない」をなくし、テクノロジーで誰もが介護できるだけでなく、したくなる社会をつくっていきます。Helppadの量産化に興味のある方々、ぜひお声がけ下さい。ご清聴ありがとうございました。