ABOUTピッチ概要
以下はMonthly Pitch当日の、スタートアップによるピッチのダイジェストです。
株式会社イキルカテの大塚です。イキルカテは、「日本の伝統工芸をアップデートし、『伝統の継承』と『誇りの回復』に貢献する」をミッションに掲げ活動しています。
イキルカテは、2022年4月に創業しました。私は代々続く華道家の長男として生まれ育ち、日本の伝統工芸が日々失われていくことに強い危機感を抱いていました。これまで培ったビジネススキルを活かし、後世に残すべき伝統工芸の発展に貢献していきたいと考えています。
さて突然ですが、ラグジュアリーブランドの定義をご存知でしょうか。
明確に条件があるわけではありませんが、一般的にラグジュアリーと呼ばれるブランドには、「歴史・伝統・クラフトマンシップ」という3つの要素が備わっていると言われています。ここで重要なポイントは、日本の多くの伝統工芸が、実はこの3要素を充たしていることです。
では、なぜ日本から世界的なブランドが輩出されないのでしょうか。理由は大きく2つあると考えています。1つがデザインを含めたブランディング。日本の伝統工芸のデザインは戦前からストップしていると言われており、現代のニーズに合わせた商品設計・ブランディングができていません。
2つ目はビジネスモデルです。伝統工芸各社はこれまでの商流を変えようとせず、むしろ依存している傾向にあります。
イキルカテは上記2つの課題を、現代の社会的潮流に合わせた商品企画・ブランディング、またそれを実現できる新しい事業の創出することで解決していきます。
事例を紹介します。小倉織物は、石川県小松市にあるシルク織物の老舗です。直近では東京オリンピックで小池都知事が巻いていた青いスカーフを覚えている方もいるかと思いますが、実は小倉織物で製作されたものです。同社は洋装広幅のシルクジャガードといわれる繊細なシルクを織る技術をもつ会社ですが、地域産業の衰退によって、この技術を持つ国内最後の会社となってしまいました。
イキルカテと小倉織物の出会いはちょうど1年前。コロナ禍で年々売上が減少する中、もう一度自分たちの技術力を世界に発信できないかという相談があったことがきっかけです。私たちは何度も対話を重ね、小倉織物初となるラグジュアリーブランド、ファクトリーブランドの立ち上げを決断しました。
イキルカテは小倉織物を客観的に理解するところから始めました。その結果、例えば職人にとっては何気ない過去の出来事も、商品を物語る非常に重要な資産になり得ることがわかりました。例えば、古い機材を一生懸命修繕する様子は職人からすればある種のコンプレックスかもしれませんが、これは日本人としての精神性を映すブランド価値そのものと言ってもいいでしょう。
ブランドは見る者に驚きと新鮮さを提供しなければいけません。職人の持つ卓越した技術力と社会的潮流を掛け合わせた唯一無二のブランドを当事者全員で考え抜きました。
そして構想から約1年経った2023年7月、「OGURA」という日本初のラグジュアリーブランドをリリースしました。デビューコレクションとして4種類のスカーフをデザイン・製造しています。
イキルカテはOGURAの独占販売権を有しており、これまでの慣習だった問屋やメーカーとの商流に頼らず、自ら販路を開拓しています。消費者からのフィードバックを商品開発へ反映することもOGURAの特徴です。まだリリース後間もない状況ですが、すでに多くの方々から反響をいただいています。
今後の展開についてです。創業後のご縁もあり、パートナーの小林が今、石川県小松市の自治体の任期付き職員に赴任しています。こうしてイキルカテは一歩も二歩も地域に入り込むことによって、北陸を中心とした数多くの職人たちとのパイプラインの形成に成功している状況です。
日本には240もの伝統工芸があるといわれています。イキルカテはこの240の可能性に向き合い、また海外にも積極的に展開していく予定です。イキルカテは日本の伝統工芸をアップデートし、誇りの回復に貢献していきます。以上です、ありがとうございました。